たけちゃん先生の中学入試国語読解法講座

中学受験専門塾で20年指導を続けている筆者が、20年の間に確立した国語の読解法のヒントを綴ると共に、日々の授業の中であった中学受験生のリアルな現在についても発信していきたいと思います。

指示語問題の解き方と出題者の狙い

今回は入試頻出問題である指示語問題について書かせて頂きたいと思います。

文章に書かれている指示語は、基本的に筆者と読者の間で「何を指している言葉か」について、共通認識出来ている言葉を指します。

では何故筆者と読者との間で共通認識出来ているはずの言葉の指示内容を確かめるのか?

それは、問題とされている指示語が何を指しているかの共通認識が出来ていない=筆者との共通認識が成立していない=「文脈を正確に追えていない受験生」を炙り出す為にはうってつけの問題だからです。

ですから、問題を解く側の我々は、筆者との共通認識が出来ている=文脈が正確に追えている事を出題者にアピールしなければなりません。

では、具体的にどの様な手順で指示語問題を解いていくのかを説明していきたいと思います。

私がいつも授業で教えている指示語の解き方は次の4ステップです。

 

1. 前後見て

2. ヒント探して

3. 前戻る

4. 当てはまったらそれが正解

 

先生方の中には「指示語の問題はとにかく前を見なさい。」とおっしゃる方も多いと思います。

しかし、闇雲に前に戻っただけでは正確に文脈を押さえて、指示語の指示する内容を正確に突き止める事は出来ません。

ですから、私が指示語問題を解く際に常に生徒たちに意識させているのが、2.の「ヒント探して」の部分なのです。

指示語を含む前後の文脈から、指示語の指示内容を突き止める手掛かりを掴んだ上で、前に戻りましょうというものです。

では、具体的に例題を用いて考えてみましょう。

平成29年度東京都市大等々力中学校の問題です。

 

京林病院は春日部の駅から歩いて数分のところにある。このあたりでは、たぶん一番大きな病院だ。

 いつもこの病院に魚を配達してるわび助が先導する形で、ぼくたちは正面入口から入り、菅野桃子さんは入院してますか、と受付で聞いた。ぼくは心の中で祈っていた。受付の人が、そんな患者さんはいませんけど、と言ってくれるのを。それはほかの三人も同じ気持ちだったはずだ。

 でも、そんなふうにはならなかった。パソコンの端末を操作していた白衣の女の人が、808号室ですね、とあっさり言った。ありがとうございます、と暗い声でお礼を言って、ぼくたちは奥へと進んだ。

 

五十嵐 貴久 『ダッシュ!』 より

 

問い

そんなふうにはならなかった。とありますが、「ぼく」はどうなる事を期待していたのですか。説明しなさい。

 

まず傍線部に「そんなふう」という指示語があるので、「ああ、これは指示語の問題だな」と確認します。

次は指示語の前後の文脈からヒントを探します。

でも、そんなふうにはならなかった。」

指示語の前に逆接の「でも」があるので、「ぼく」が想定していた事とは逆の内容が「そんなふう」の指す内容だと見当がつきます。

ここで初めて前に戻ります。

果たして「ぼく」はどんな事を予想していたのだろうと考えながら戻ります。

すると、前の文中に「僕は心の中で祈っていた。受付の人が、そんな患者さんはいませんけど、と言ってくれるのを。」という部分がある事に気付きます。

「祈っていた」という表現は、問題文の「ぼく」の期待していた事にも当てはまりますし、「ぼく」がいい意味で想定していたという内容にも合致しますので、受付の人が言った「そんな患者さんはいませんけど。」が「そんなふう」の内容であり、「僕の期待していた事」を指す部分だと分かります。

つまり、「僕」は「受付の女の人」が「そんな患者さんはいませんけど。」と言ってくれる事を期待していたのだと分かります。

まだここで終わりではありません。

「受付の女の人」は「そんな患者さんはいませんけど。」と言っていましたね。

ここにまだ「そんな」という指示語が登場します。

では次に、「僕」は「受付の人」がどんな患者さんがいないと言ってくれる事を期待していたのかを考えながら、前に戻ります。

すると、僕たちが受付で「菅野桃子さんは入院してますか。」と聞いている部分がある事に気がつきます。

「入院していますか。」と聞いているのですから、「そんな患者さん」は「菅野桃子さん」を指しているのだと分かりますね。

ですから、「そんな患者さん」の「そんな」の部分を「菅野桃子という患者さん」と具体化してあげれば、解答が完成します。

 

解答

受付の女の人が、菅野桃子という患者は入院していないと言ってくれること。

 

主語を忘れずに!

それから、「期待していた」事を書くので、単に「言うこと」と書くよりも、「言ってくれること」と書いた方が、「僕」の期待している感じが出ますよね。

あとは当たり前の事ですが、「どうなること」と聞かれているので、文末は「こと」で終える様にしましょう。

私が普段教えている生徒達の中にも、こういう基本的な条件を無視した為、減点されてしまうケースが多々見られます。

注意しましょう。

以上、長々と書かせて頂きましたが、「指示語問題の解き方」についてなるべく丁寧に解説させて頂きました。