たけちゃん先生の中学入試国語読解法講座

中学受験専門塾で20年指導を続けている筆者が、20年の間に確立した国語の読解法のヒントを綴ると共に、日々の授業の中であった中学受験生のリアルな現在についても発信していきたいと思います。

接続語問題の解き方

こんにちは、たけちゃんです。

今回は接続語問題の解き方について綴っていきたいと思います。

まず、接続語ってどんな言葉なんでしょう?

私はよく接続語の説明を初めてする時に、「文と文、言葉と言葉を結んでくれる接着剤の様な言葉」という表現をします。

しかし、ここで生徒達の中にはある疑問が残ります。「文と文を結ぶ為の言葉なのに、何で接続語は何種類もあるんだろう。」という疑問です。

そこで私はこう説明します。

「接続語はただ単に文と文を結ぶだけでなく、前の文と後の文とがどういう風につながっているかを教えてくれる言葉なんだ。」と。

皆さんも、文章を読んでいる時や日常会話などで、接続語によってその後の話の展開が予想出来る場合が少なからずあるかと思います。

例えば、それまで自分を褒める様な事を言われた後に、「でもね」と言われれば、「ああ〜この後は自分を否定する様な発言をされるんだな。」と分かったり、延々と長ったらしい話をされた後で「つまりね」と言われれば、「ああ、今までの話を分かり易く言い換えてくれるんだな。」と分かったりしますよね。

つまり、我々は無意識のうちに接続語によって、後に続く文脈におおよその見当をつけながら、会話をしたり、文章を読んだりしている訳ですね。

では、中学入試で接続語の問題を出題する出題者は、どういう意図を持って接続語の問題を出すのでしょうか?

私はこう解釈しています。

「接続語の問題が解ける」→「接続語が無くても前後の文章の繋がりが読み取れている」→「文章が正確に読めている」

このような考え方の下、接続語の問題を出題しているのではないかと推測します。

ですから私達解答者は接続語の問題を正確に解いて、接続語が隠されていても、前後の文脈をきちんと追えている事を出題者にアピールしなければなりません。

そこで私は授業で、次の3ステップで指示語の問題を解くよう、生徒たちに指導しています。

 

1. 前後見て

2. つながり考え

3. 入れてやる

 

中でも私が生徒たちに特に徹底させているのが、2.の「つながり考え」の項目です。

接続語の問題の答え方でありがちなのが、選択肢の接続語を一個ずつ当てはめていって、最も自然なつながりになるものを選ぶという、所謂「当てはめ方式」です。

正直、このやり方でも解けてしまう問題もあります。特に日本語に対する感覚が鋭い生徒ほど、解けてしまいます。

なぜ解けてしまうかと言うと、私達の殆どは日常生活で日本語を用いて生活しています。

毎日日本語を使っていく中で、自然と日本語に対する言葉の感覚は磨かれていきますので、言葉で明確に説明出来なくても、空欄を埋めるのに相応しくない接続語には身体が違和感を感じます。

その「絶対語感」とも言うべき感覚で、受験生の多くは接続語の問題を解いてしまうのです。特に普段から活字の文章に慣れ親しんでる受験生や、日本語に対する感覚が鋭敏な受験生程、「当てはめ方式」で解けてしまうのです。

では、そんな七面倒くさいやり方はやめて、接続語の問題は「当てはめ方式」で解けばいいじゃないかという方もいらっしゃる事と思います。

しかし、これこそが入試問題における罠なのです!

中学入試で出題される文章、特に説明文や論説文は、難関校の問題になればなる程、小学6年生が日常使用している日本語レベルよりも遥かに高いレベルの文章が出題されます。

そこで日常会話レベルの言語感覚だけで接続語を繋ごうとすると、文脈が正確に読み取れていないので、間違えてしまいます。

稀に高度な言語感覚を持っていて、中学入試レベルの問題であれば、何となく当てはめてしまうだけで解けてしまう受験生も中には居ます。

しかし、ここにもう一つの落とし穴があります。

私立中学は大学の附属校でない限り、6年後に大学入試を控えております。

そして、接続語の問題は大学入試でも出題されるのです。

大学入試に出題される文章はほぼ100%論説文と言っても差し支え無いと思います。

それも、大学教授の書く研究論文の様な、到底私達が日常使っている言語感覚では太刀打ち出来ない様な難解な文章が出題されます。

「当てはめ方式」で接続語の問題を解いている受験生は、大まかに文章の流れを追って、その流れの中で、読んでいて違和感を感じない接続語を、その人の言語感覚で当てはめていくやり方で解いていきます。ですから、日常の言語感覚をはるかに超える様な文章に出会った場合、正確に文脈を捉える事が出来ず、当てはめても不自然と感じない接続語が選択肢の中から2つも3つも出てきてしまい、結果的に間違えてしまうという事態に陥ります。

実際、私が大学受験の際、それまでの「当てはめ方式」が全く通用しなくなり、それまで苦もなく正解出来ていた接続語の問題がさっぱり正解出来なくなってしまった経験があります。

一年目の大学受験に失敗し、浪人していた頃、某有名予備校の人気講師の講義を受講していた際に、初めて前後の関係を分析するという「ミクロな視点」を教えて頂き、目から鱗が落ちました。

その講義以降は全体の流れがつかみづらい文章でも、「ミクロな視点」を駆使して前後の関係さえつかめれば、接続語の問題は正解出来るようになりました。

どうですか?

接続語の問題を安易に自分の言語感覚で解いてしまう事の危険性が少しは分かって頂けたでしょうか?

それでは前置きが長くなりましたが、実際の入試問題を使って、接続語の問題を正しく解いていってみましょう。

少し古い問題ですが、平成25年度中央大学附属横浜中学の問題です。

 

桜の花びらがちり終わったころ、亜樹と毎日お弁当を食べる相手は、藤本さんだけになっていた。

美穂は、おしゃれ好きが集まっている田浦さんたちのグループにはいっていたし、矢島さんは、クラスの男子と仲のいい川辺さんたちとくっついていた。

このまま四人でなかよしになっていくと思っていた亜樹としては、ふたりがはなれてしまったのはショックだった。

美穂にあいまいな態度をとったのがいけなかったのだろうか、矢島さんにはもっとくやしそうにしてみせたほうがよかったのだろうか……となやんでみたところで、すでにふたりはいってしまった。まあでも、ひとりぼっちになったわけじゃないからいいかと思って、亜樹はそのまま藤本さんといっしょにいることにした。

(             )、おとなしい藤本さんとふたりきりですごす休み時間やお弁当の時間は、四人でいたときよりたいくつだった。

 

草野たき『リボン』より

 

問 (       )に入れるのにもっともふさわしい言葉を次の1〜5から選び、番号で答えなさい。

 

1. むしろ

2. もちろん

3. だから

4. だけど

5. どうやら

 

では、解いていきましょう。

まずは(      )の前を見ます。

すると「まあでも、ひとりぼっちになったわけじゃないからいいかと思って、亜樹はそのまま藤本さんといっしょにいることにした。」と書いてあります。

次に(      )の後ろを見ます。

すると「おとなしい藤本さんとふたりきりですごす休み時間やお弁当の時間は、四人でいたときよりたいくつだった。」と書いてあります。

(      )の前の文と後の文の関係を考えてみましょう。

前の文では亜樹が藤本さんと二人っきりになってしまった事に対して「ひとりぼっちになったわけじゃないからいいか」と亜樹が藤本さんと一緒に居る事に対して、どちらかと言えば+の心情である事が分かります。

後の文を見ると、亜樹は藤本さんと二人で過ごす休み時間やお弁当の時間について「四人でいたときよりたいくつだった」と藤本さんと一緒に居る事に対して-の心情に変化した事が読み取れます。

(        )の前後で+の心情から-の心情に変わった事が分かりましたので、(        )には逆接の接続語を入れれば良い事が分かります。

ここで初めて選択肢を見てください。

選択肢の中で逆接の関係を表す接続語は4の「だけど」しかありませんので、正解は4となります。

長々と書かせて頂きましたが如何でしたでしょうか?

今回強調させて頂きたいのは、接続語の問題を解くに当たって、絶対に「当てはめ方式」はしてはいけないという事と、文章、特に物語文を読む時は+と-の概念というのを頭に置きながら読んで欲しいと思います。