たけちゃん先生の中学入試国語読解法講座

中学受験専門塾で20年指導を続けている筆者が、20年の間に確立した国語の読解法のヒントを綴ると共に、日々の授業の中であった中学受験生のリアルな現在についても発信していきたいと思います。

思い出の授業

こんにちは、たけちゃんです。

前回の記事に関連して、私が15年前に行った、今でも印象に残っている授業について書きたいと思います。

当時、私が勤務していた塾は、一応カリキュラムはあったのですが、それ程カリキュラムに縛られず、ある程度講師の裁量でやりたい事をやらせて下さる塾でした。

そこで私は15年前の6年生の国語の授業の際、ある私立中学校の過去問の文章だけを生徒に配布してこう言いました。

「これから君達にこの文章を使って問題を作ってもらいます。勿論解答も自分で作って下さい。その際、誰もが納得できる解答の根拠と、その問題を通じて君達が受験生のどういう国語力を測る為に作った問題なのか、出題の意図も教えて下さい。」

生徒達はざわつきました。

でも、彼らは今まで自分が「解かされてきた」問題を、今度は出題する側の視点に立って、「自分が中学校の先生だったら、どういう生徒が欲しいか。」「では、自分が欲しいと思った生徒を合格させるには、どの様な問題を作ったら良いか。」「その解答の根拠は万人が納得できる客観性のあるものなのか。」を必死に考え、次々と力作を作ってくれました。

次の時間は皆が作ってくれた問題を互いに解き合い、出題者から出題の意図と解答、解説をしてもらい、他の生徒達からはその問題に対しての意見を言ってもらいました。

授業では喧々諤諤のなかなか白熱した議論が展開されました。

授業後、生徒達からは「今までは何も考えず、ただ与えられた問題を解いていただけだったけれど、今回の授業で出題者がどういう狙いを持って出題しているのかを意識出来る様になった。」「問題を作る人はあらかじめその答えを持っていて、その答えは正しい手順を踏めば、必ずたどり着ける様に作られている事が理解出来た。」等々、嬉しい感想を聞く事ができました。

その後の授業でも、彼らと授業をする際は、ただ問題の解説をするのではなく、「この問題の出題者の狙いは何か。」とみんなで考えながら解いていく事で、生徒達に多角的な視点を持って問題に取り組んでもらう事が出来る様になりました。

彼らは決して最難関校を目指すような学力の高い生徒ばかりではありませんでしたし、この授業をきっかけに全ての生徒が飛躍的に国語の読解力が向上した訳でもありません。

しかし、中には問題の向こう側に「出題者」の存在を意識しながら読解問題を解く様になった結果、読解力が飛躍的に向上した生徒も中にはおりました。

自分の伝えたかった事を伝えることが出来、生徒も同じ思考で読解問題に向き合ってくれる様になったという点で、15年前のこの授業は今でも心に残ってます。